被相続人の死亡後に財産が移転する場合に、その財産に対して相続税が
課されることがあります。
一方、生前に財産を移転した場合には、贈与税が課されることがあります。
死亡前に財産を贈与した場合に、本来であれば相続税として課されるべき
税負担を逃れることができるというのでは、税負担の公平性を保つことが
できないからです。
相続税の負担をご心配になる方は多くいらっしゃいますが、
実際には、以下のように、基礎控除の枠が相当の額であるため、
現実に相続税が発生する相続は全体の5%程度であると
われています。
もっとも、一方で、一定の資産がある相続においては、相続税負担が
紛争の原因となる事例もありますので事前評価をしておく必要があります。
相続税について目配りをしない遺言書を作成し、紛争が生じてしまっては
遺言書作成の意味が半減します。
遺言書作成には、相続税に関する基礎知識は不可欠です。
なお、相続税については、近時様々な税制改正が議論されているので、
実際に遺言書を書く際には、税制改正の有無について確認が必要です。
相続税は、次の方法によって算出されます。
(1)「課税価格」を算出する
課税価格=本来の相続財産+みなし相続財産(受取人が被相続人でない生命保険金等)
+相続開始前3年以内の贈与にかかる財産(相続時精算課税制度利用の場合には、
その贈与時の贈与額)―非課税財産(墓所、生命保険金の一定額等)―債務
(2)「課税遺産総額」を算出する
課税遺産総額=課税価格―基礎控除額
*基礎控除額=5000万円×法定相続人
(3)「相続税の総額」を算出する
ア 課税遺産総額を、各法定相続人が法定相続分に応じて取得した場合に
おける各取得金額について、次の表の税率にあてはめる。
| 課税標準 | 税率 | 控除額 |
| 1000万円以下 | 10% | - |
| 3000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 3億円以下 | 40% | 1700万円 |
| 3億円以上 | 50% | 4700万円 |
イ 前記アの金額を、合計する(=相続税の総額)
(4)各相続人等の実際の相続税額を計算する
各相続人等の相続税額=相続税の総額×(相続人ごとの課税価格÷すべての課税価格の合計額)
×1.2(ただし、配偶者、子ども等以外の場合のみ)―税額控除(配偶者の税額軽減等)
【税額控除の種類】
・ 贈与税額控除
(被相続人から、相続開始前3年以内に贈与によって財産を取得し支払った贈与税額)
・ 配偶者に対する相続税等の軽減
(課税価格の合計額のうち配偶者の法定相続分相当額又は1億6000万円の大きい方)
・ 未成年者控除
・ 障害者控除
・ 年次相続控除
・ 外国税額控除
* なお、例えば配偶者に対する相続税等の軽減措置は、申告書等を
提出しなければ適用を受けられませんので、相続発生時には注意が必要です。
遺言書作成にあたって、相続税との関係ではどのような点に
注意すべきでしょうか。
1.各相続人の納税資金に配慮する
基本的に、相続税は金銭で納付しなければならないため、
不動産、非公開会社の株式等の流動性の低い財産を相続した
相続人は相続税の支払いに窮することがあります。
よって、遺言書作成にあたっては、漫然と財産を振り分けるのではなく、
各人の相続税の負担も考慮すべきです。
2.各種の特例等を有効に活用する
例えば、小規模宅地等の特例(被相続人が居住用又は事業用として
用いていた土地)については、最大80%の評価額を減額するという
ものがあります。
特例には、被相続人又は被相続人と生計を一つにしていた親族の
居住用宅地といった要件があり、特例の適用を受けることが出来るか
否かによって相続税額が大きく異なります。
よって、遺言書を作成する際にも、法律家に相談して、このような特例等の
活用を検討するべきでしょう。
3.相続税対策と遺言書の内容を合致させる
各種の相続税対策(財産評価を抑制する、相続時精算課税制度の利用等)
との関係で、それに沿った内容の遺言書を作成することが重要となります。
つまり、相続税対策と遺言書作成は、基本的にセットとして考えるべきです。
相続税の発生が心配されるケースであれば、司法書士だけでなく税理士を
含めて、これらの相続税対策を踏まえた遺言書の作成を検討すべきでしょう。