「後見」というのは、以前の「禁治産」に代わる制度で、法律でいうところの
「精神上の障害に因り事理を弁識する能力を欠く常況にある」人を対象にしています。
つまり、重度の痴呆が進むなどして、日常の買い物なども一人ではできない程度に
判断能力が低下しており、時には正常な判断能力があるように思えても、
基本的には判断能力がほとんどないと思われる人のための制度です。
こうした人の場合、自分が行なおうとする行動について、その意味や結果を
正しく理解したり予測したりすることがむずかしいので、悪徳商法などの
被害に遭いやすい面があります。
そこで、本人、その配偶者、四親等内の親族といった人が申し立てることによって、
家庭裁判所が「後見開始の審判」という手続きを取り、「成年後見人」が選ばれて、
後見が開始されます。
これにより「成年後見人」には、次のような権限が「付与」されます。
(1) 本人が行なった行為を取り消すことのできる「取消権」
たとえば、本人が著しく安い値段で土地を売却してしまったような場合、
契約を取り消して代金を返却させ、土地を取り戻したりすることができます。
こうしたことは本人と成年後見人だけに許されており、家族でも、成年後見人
になっていなければ認められる行為ではありません。
なお、取消権については、「禁治産」の制度では本人が行なった一切の行為が
対象となりましたが、新制度では食料品や衣料品の購入などのような
「日常生活に関する行為」については取り消すことができなくなっています。
(2)本人に代わって財産に関するすべての法律行為を行なうことのできる「代理権」
たとえば、預貯金の管理、生活費に充当するための財産の処分、介護サービスの
契約や損害賠償請求、遺産分割協議などを行なうことができます。
当然ながら、成年後見人に付与されるこうした権限は、被後見人本人のために
行使されるものでなければならず、成年後見人が勝手に被後見人の財産に
手をつけるといったことがあれば、法律上、処罰の対象となることは
言うまでもありません。